今の会社に入社して2ヶ月になるけど、先週同僚にカミングアウトした。
カミングアウトした相手はハワイ出身の男性のエンジニアさん。30代前半で、彼には日本人の奥さんと生まれたばかりの子どもがいる。
彼はとても明るくて、今一番仲の良い同僚かもしれない。
普段はチームメンバーの4, 5人で行動することが多い。コーヒーを買いに行ってちょっと雑談をしたり、食堂にランチを食べに行ったり。その中で「彼女いないの?」と聞かれることは度々あった。その都度ごまかしていたんだけど。
4, 5人を相手に一気にカミングアウトする程、僕はまだゲイであることに自信はない。
ちなみに僕以外のチームメンバーは日本人・中国人(女性)・イギリス人・アメリカ人(ハワイ)といった感じ。
そして入社して2ヶ月のこのタイミングで、ハワイ出身の彼と2人でランチを食べる機会があった。それが先週のこと。
「Tell me your type! What kind of girls?? (chuckはどんな女性が好きなの?)」
おっ、きたきた…!これはゲイをカミングアウトするチャンス。「言ってなかったけど、ゲイなんだよねーあはは」とか、言えば良いんだ。
頭の中で必死に計算するよね。
まず2人きりであること。(+10点)
彼がアメリカ出身であること(+20点)
彼が高等教育を受けた専門職であること(+20点)
彼がとても明るい性格で、面倒見の良い性格であること(+30点)
評定が80点を超えたのでこれは成功する確率が高い。イケると思った。
「I haven't told this to anybody yet... but I'm not straight(いやあ、言ってなかったけど、僕はstraight(ノンケ)じゃないんだよね)」
ああ…英語で良かった…。not straightの言いやすさ。日本語だと、"ゲイ"は強すぎる感じがするし、"ノンケ"って言葉はどれほど浸透しているのか良く分からない。
彼の反応はこっちが笑っちゃうほどオーバーだった。
全然気づかなかったよ!僕には2人のゲイの親友がいるよ!白人のゲイなら気づくんだど、chuckは全然そんな感じしないよね!Awesome!Coooool! みたいな感じ。
周りの人に完全に丸聞こえで、とても新鮮だった…w
まあ読み通り、ひとまず成功して良かった。
でもモヤモヤはするね。ゲイをカミングアウトすることは賭けみたいなもので、不確実性へのリスクは全部こちらが払わなければいけないわけで…。見えないマイノリティの面倒くさいとこだね。
いっそ「I'am GAAAAAAAAY」みたいなTシャツでも着て生活できたらどんなに楽なんだろうと思ったりする。
実際にその日はドッと疲れてしまって、しばらく仕事にならなかったし...。
でも「苦しみの中に意味を感じること、それが人生」だってテレフォン人生相談の加藤先生が言ってたしね。(テレフォン人生相談信者)
苦しみの中に意味を感じることが最高の価値です!加藤諦三&マドモアゼル・愛!人生相談
だけど残念ながら全てが解決したわけじゃない。
例えばハワイ出身の彼と、別の同僚と3人で話しているとする。別の同僚は僕がゲイであることは知らない。だから当然のように「chuckは彼女つくらないの?」と質問してくる。その時、僕はカミングアウトできないかもしれない。
今までしてきたように僕1人がウソをつくなら問題は無いんだけど(いやホントは辛いんだけど)、そのシチュエーションでは同僚までもがウソの共犯になってしまう。それは本当に申し訳なくて、今までそういう失敗は多々あった。
結局、全勝ちするしかない。チームメンバー全員にカミングアウトし切るしかない。そうでないと、中途半端なままの生き地獄みたいな状態になる。
そしてさっそく一昨日そういう状況になった。チームメンバー5人でランチを食べていた時に、夏休みの予定の話になった。
僕が大阪に行ってくるよーと言うと、「えー、誰と行くのかなぁ?(ニヤァ)」みたいな。みんなが僕のことをニヤニヤしながら見ていた。この空気を壊したくなくて、ゲイだなんてとても言えなかった。
何より、カミングアウト済みの彼に申し訳ないと思った。情けなくて顔が見れなかった。
その後、彼と二人切りになった。僕の予想に反して彼はニヤニヤしながら「ホントは彼氏と行くんじゃないの?w」なんて小声で聞いてきた。
僕がチーム全体にはまだカミングアウトできないことを理解しつつ、だけど確実に気を配ってくれるこの感じ。この手応えは今までになかったもので、戸惑いつつも泣いちゃうくらい嬉しかった。
日本人の中で(急に話の主語がデカい)、こういう対応ができる人がどれだけいるだろうと思ってしまう。IT業界は比較的リベラルと言われるけど、男性社会だなと感じることが多々ある。
それに比べたら、今のチームはかなり過ごしやすい。多国籍だし、そもそも僕らのフロントエンドチームで一番デキるのは中国出身の女性だし。それに僕は日本人のゲイだし。
外国人が多くて英語でコミュニケーションするような会社はこれが初めてなんだけど、今はリベラルな空気の中で未来への希望を持って働けている。
英語を勉強してて良かったね。マイノリティこそ、なるべく多様性のある会社にいた方が居心地がいいかもしれない。人生の早い段階でこういう環境に身を置けて良かった。
…とまあ最終的には、自分の成功体験を押し付けるという老害的アプローチになってしまったけど、Web業界に生きるゲイの近況でした。