「続・下流老人 一億総疲弊社会の到来」という本を読んだので、その感想を。
読み始めたきっかけ
Amazonでオススメされたので。
「続」とあるけど、前編を読まなくてもどうやら楽しめるらしかったので。
読んでみて
非常に面白かった。
現代日本における高齢者の生活がいかに不安定なものか、実例を通じてよく分かった。
自分が若者だからか、どうしても普段の生活では「若者の貧困」ということばかり意識してしまう。だけどこの本では、高齢者は決して優遇されているわけではなく、所得の中央値はとても低いということが示されていた。
また保育園の待機児童問題のように、介護施設においても需要供給が釣り合っていないという問題があるようだった。
政府が一部の介護施設の認定基準を上げた結果、修繕費・管理費・人件費の増加が入居費用に転嫁されてしまい、結果として入居費用が払えずに介護施設にあぶれてしまう高齢者がいるというのは何とも歯がゆい話だった。施設側としても空きベッドを何とかしようと、所得の高い高齢者を取り合っているという現状があるらしい。
そして所得・貯蓄が少ないわけではないのに「下流老人」化してしまうケースもある。息子・娘夫婦が離婚して実家に帰省。さらに子どもを連れてきた場合には、シングルファーザー/マザーを養っていく必要が発生するかもしれない。そのような状況で配偶者に介護が必要になれば、いわゆる「老々介護」のリスクまでのしかかって来る。
そのようなことが現実に起きているのだと思うと、ゾッとしてしまった。人生、最後まで筋書きは分からない。いくら資産を築いても、絶対に充分ということは無い。
また、高齢者福祉を語るにあたり、財源・財政について触れていたのが非常に良かった。そのパートは慶応大学の教授に意見を伺ったようで、とても学びが合った。
日本の経済は「経済成長」をアテにしている傾向があって、それは高度経済成長の名残のようなものなんだけど、思うように経済成長が果たせなければ全てが計画倒れになってしまう。一方で、OECD(先進国)諸国の中で、日本の所得税率はほぼ最下位で、そもそもの財源自体が少ないらしい。その上、前回の増税(8%)の増収分の大半が国債の返済に充てられてしまった。だから国民は増税による「受益感」を持てずにいる。
こういった状況が長く続くと、社会に分断が起こる。若者対高齢者。低所得者対高所得者。派遣社員対社員…。
筆者は最後の章で、自己責任論の限界と共助の重要性を説く。経済成長への幻想から抜け出して、社会全体で負担をし合い、互いに助け合う道を強調する。
だからもっと税率を上げて、適切な歳入の配分を果たせば、国民の「増税アレルギー」に対処できるはずだとのこと。
この本は少しだけ自分の考えを変えてくれたかもしれない。
社会人3年目としてこれまで何とかやってきたけど、これからの人生を全て自己責任で生きていくとしたらそれはとても息苦しい。世の中は基本的には増税に反対で、それを声高に主張するメディアがあたかも民意を代弁するかのような顔をしている。
だけどもう転換期に差し掛かっているのかもしれない。ちょっとくらい税負担が増えても、それが社会全体のセーフティーネットの拡充に繋がるのなら僕は嬉しい。
ここでの問題は、税の配分がきちんと為されるのかという不信感がすっかり広まってしまっていることがだけど、それは僕ら市民・国民が監視して訴えていくしかないんだろうなという気がしている。
それと「これ以上増税されると家計が回らなくなる」という声をよく聞くけど、そういう家庭・個人は既に貧困に片足を突っ込んでいる状態なんだと思う。「中流」に意地でもしがみつくのではなく、貧困であることを正しく認識し、適切な助けを求められる方が正常な社会の在り方だと、この本を読んでから思った。
高齢者の貧困だけではなく、社会の在り方まで論じた名著でした。