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25歳のゲイの個人ブログ

太宰治の斜陽がけっこう面白かった

読書記録 洋楽・邦楽

AM1:30に副業を終えて、なんとなく読書開始。

布団の中で、kindleを読む。少し前にダウンロードした太宰治の斜陽を読んだ。

 

気づいたら夢中になって読んでいて、けっこう面白かったので読書感想文。

引用箇所は線で囲ってあります。

 

話の背景。

戦後の日本です。主人公は29歳の女性。ただ、29歳っぽくはない。あの時代だからか、文学の中だから、なぜか純粋っぽい印象を受けて、29歳っぽさを感じません。

それと、家族として母親と弟(直治)が登場します。母親は病気がちで、弟は戦争に行ったきり行方不明。

 

家族はもともと貴族だったんですよね。ただ、父親がいなくなったあたりから、だんだんと風向きが。。。

親戚の叔父から援助を受けていたものの、それがだんだんと苦しくなってきた。というのが話の序盤。

 

序盤

時代背景や、父親と弟の件がありつつも、序盤はまだ明るい印象。いや、明るくはないんだけど、ちょっと洒落てるんですよね。

母親と娘のやりとりがおしゃれ。娘は貴族に生まれた母親をすごく慕ってるんですよね。娘の目から見た母親は、本当に優しくて他人思いで、教養を感じさせる人物として描かれます。(それだけに後半どんどん衰弱していくのが辛い。。)

 

それと、父親臨終の回想があります。その時庭にいっぱい蛇がいたそうです。斜陽では、蛇は良くないこと、あるいは死や病気のメタファーとして登場します。

ありがちだと思いつつ、わかりやすくていいですね。

 

弟は生きて帰ってきます。良かった…!そこはあっさり帰ってくるのね!

ただし、重度のアヘン中毒。アヘン中毒から抜けるために、帰国後はアルコール中毒になるという。。。辛い。

 

それから、先述のように経済的に苦しくなってきます。

おお、お金がなくなるという事は、なんというおそろしい、みじめな、救いのない地獄だろう、とうまれてはじめて気がついた思いで、胸が一ぱいになり、あまり苦しくて泣きたくても泣けず、人生の厳粛とは、こんな感じをいうのであろうか

 

叔父が地方に別荘を買ったので親子で移住することになります。なんというか、事実上の都落ちですね。そうとは書かれていませんが。

私たち二人が可哀想で可哀想で、いくら泣いてもとまらなかった。泣きながら、ほんとうにこのままお母さまと一緒に死にたいと思った。もう私たちは何も要らない。私たちの人生は、西片町のお家を出た時に、もう終わったのだと思った。

 

地方移住後

この描写がすごいなと思いました。

朝も昼も、夕方も、夜も、梅の花は、溜め息の出るほど美しかった。そうしてお縁側の硝子戸をあけると、いつでも花の匂いがお部屋にすっと流れてきた。三月の終りには、夕方になると、きっと風が出て、私が夕暮れの食堂でお茶碗を並べていると、窓から梅の花びらが吹き込んできて、お茶碗の中にはいって濡れた。

まずとてもクリアに想像できるのもすごいですし、どんな状況になっても何気ない日常の美しさを忘れてはいけないなと。 

 

ただ、地方に移住してからは、一気に物悲しい雰囲気が強まります。

弟はしょっちゅう飲みに出かけていて、数日帰らないことが普通です。それでも、そんな弟を母親は心の支えにしてるんですよね。なんだかんだ、長男が好きなんですね。それを娘である主人公の視点から描かれるのですが、胸がキュっと縮まる想いでした。

 

弟はすごく遊び人っぽいんですが、厭世的で博識で、すごく魅力的に映ります。

人から尊敬されようと思わぬ人と遊びたい。

けれども、そんないい人たちは、僕と遊んでくれやしない。

 

そんな弟が、しょっちゅう東京に遊びに出ていて、それを地方で暮らす妹の視点から描かれ、ああ昔も今も東京という街は。。。という気分になりました。

 

恋文

おとなしくて母親思いの主人公ですが、実は恋をしています。

弟の知り合いで、上原という作家に恋をしています。この作家が、中盤から存在感を表してきます。弟と上原は、要は東京で飲みまくってるわけですよね。すごく享楽的に生きていて、主人公のいる世界とは真逆です。

人間失格のあのシーンに似ている。主人公と、先輩(だっけ?)が夜遊びしまくるやつ。

東京で遊びまくる人たち像、みたいなものが太宰治の中にあるんでしょうか。

 

主人公はそんな上原に、弟を通して一度会ったことがあります。そのとき、夜中にキスされてしまって、それ以来、6年間恋をしています。6年間!

それで、手紙を3度送るのですが、すごい文量なんですよね。引用もすごいし、論理武装して「あなたが私に会うべき理由」みたいなものを書き立てたりしています。あっ、この子こんなに熱量ある人だったんだと驚きました。

もう一度お逢いして、その時いやならハッキリ言って下さい。私の胸の炎は、あなたが点火したものですから、あなたが消していって下さい。

こんなにも熱く、こんなにも純粋に誰かを想えるなんて、羨ましくなります。一度も返信が無かったのが悲しいですが。。

 

死別

物語の中盤、ついに母親が他界します。

突然、直治が、めそめそと泣き出して、

「なんにも、いい事が無えじゃねえか。僕たちには、なんにもいい事が無えじゃねえか」

と言いながら、滅茶苦茶にこぶしで眼をこすった。

 

中盤で結核があることが発覚し、徐々に衰弱していってしまうのが読んでいて辛いですね。

それでも、母親は最後まで尊い人として描かれます。それだけに、死別の前後で小説の雰囲気が変わってしまいます。

 

冒険

母の他界がきっかけになったのか、主人公が東京に向かいます。

 

恋と革命は良くないものと教えられてきた。と主人公の1人称で書かれます。当時は個人思想への抑圧が強く残っていたのかもしれません。

斜陽を通じて、当時の若者?が古い道徳観との葛藤に苦しんでいることが描かれます。まあ、現代の日本でも世代間のアレはあると思うんですが、当時のそれは比ではなかったのかなあと、初めて考えました。

上の世代の人達が、戦争を主導していた大人なのたちですから。

 

斜陽の主人公の世代って、今の世代で言う後期高齢者でしょうか。彼らは若いころ、道徳観に苦しんだりしたのでしょうか。もはや、その上の世代の人たちは生きていないわけだし、そのうち当時の空気感を知る人はいなくなってしまうんでしょうね。

とかふと思いました。

 

そんな道徳観の揺らぎからか、主人公は自分本位に行動します。もう会いに行くっきゃ無いと。

 

で、東京に行くんですけど、これがまた読んででハラハラするんですよね。

作家の上原荻窪に住んでいます。中央線のあの荻窪ですね。地方から荻窪に、マジメな主人公が会いに行きます。しかも夜。

グーグルマップも電話もないのに、よく会いに行きますよね。すごい行動力。

 

それで、ようやく上原の自宅にたどり着くんですけど(だどり着いた!)、不在でした。

上原の奥さんと遭遇して、ちぎれちゃった鼻緒(ゲタの紐)を直してもらっちゃったりして。

 

それから、奥さんから駅前のおでん屋で飲んでるかも。と言われて、主人公は駅前に行ってみます。すると、別の駅前で飲んでいると言われて、たらい回しの結果、荻窪に戻ってきてようやく再会します。

その再会のシーンなんですけど、上原は文学仲間?や若い女の子と宴会をしています。盛り上がっていて楽しそう、、というわけではなく、どこか虚しい感じが。あくまで主人公目線ですが。

6年ぶりに見た上原は、もう老けちゃってるわけですよね。そんな連中が大学生みたいにノリだけで飲みまくっていて、主人公は白けちゃいます。

大切な人を失って行動したはいいものの、この現実。。。

 

それでも、そこで働いている女将さんがうどんをごちそうしてくれます。女将さんは「向かいのXXさんからうどんもらってきてちょうだい!この子に食べさしてあげましょう!」みたいに頼むわけですね。

こんなところに人の温かみが…。戦後、東京。

 

それで正気を取り戻した主人公は、おもむろに悟ります。

この人達は、こうすることでしか生きていけないのだと。

ああ、何かこの人たちは、間違っている。しかし、この人たちも、私の恋の場合と同じ様に、こうでもしなければ、生きて行かれないのかもしれない。人はこの世の中に生まれてきた以上は、どうしても生き切らなければいけないものならば、この人たちのこの生き切るための姿も、憎むべきものではないかも知れぬ。

 

そして、こうも確信します。あの人は自分に気があるのだと。

えっ!?手紙の返事もないのに???そっちのけで若い女の子と遊びまくってるのに??!どこからその自信は来るんだ。。(?_?)!

 

それで、2人で外に出ることに成功します。

 

「本当は私と2人きりになりたかったのでしょう?」

超自信満々!

 

「うん、そうだよ」

そうだった!

 

それから、上原は、手紙を読んだことを告白。また、自分は農家の出身で、主人公が貴族出身だからコンプレックスがあることも告白。

そうだったんだ。

 

それから良いムードになって、またキスされちゃいます。

6年前とは違って、老けてしまったし、泥酔しているし、くしゃみしまくってるんですよね(病気?)

でも、「しくじった!惚れちまった!」なんて言っていて、えーなんか素敵!と思いました。

 

それから、上原の友人の家に泊まりに行きます。

2階の部屋を借りて、主人公のために布団を敷いてあげるんですよね。で、「トイレはあっちにあるから。朝になったら帰りなさい」と優しく教えて、帰ってしまいます。

 

紳士!

 

と思いきや、1時間後に帰ってきて、よろしくやります。結局。。。

 

でもまあ結ばれてよかったね。めでたしめでたし。と思いきや、弟が自殺します。急。

深夜に心臓がドキッとしちゃいました。。。

 

遺書

それから章が変わり、弟の遺書です。

もう、遺書がすごく長いです。人間失格的な雰囲気で、「生きる権利があるのと同じように死ぬ権利もあるんだ。。」みたいな書き出しです。

遺書の中では、弟がとても葛藤していたことが明かされます。戦争に行ったり、親が死んだり、生きていくのが辛かったと。それに、貴族として生まれて、凋落していくことが耐えられなかった節があったことも書かれます。

東京で飲み明かして過ごしたのも、生きるのが辛かったからだと。ただ、そうして享楽的に遊んでいても「一度足りとも楽しいと感じなかった」と書かれています。自分が周りとは圧倒的に違うという感覚は辛いですね。

 

遺書の他の箇所は賛否が分かれそうなので、 割愛します。

 

おしまい

結局、主人公は上原の子どもを身ごもります。そして、自分だけで育てていくことを決心しています。

彼に宛てた手紙でこのようにも書いています。

この世に、戦争だの平和だの貿易だの組合だの政治だのがあるのは、なんのためだか、このごろ私もわかって来ました。 あなたはご存じないでしょう。だから、いつまでも不幸なのですわ。それはね、教えてあげますわ、女がよい子を生むためです。

おお。。。 

誰かさんたちに聞かせてあげたいですね。

 

 

 

勢いで書いてしまいましたが、斜陽はこんな感じでした。

全体的に薄暗い雰囲気があり、抑圧感があります。社会全体のはびこる圧倒的なねじれ感が伝わってくるようです。

そんな中でも、母親は、最後まで自分の尊厳を保ちました。弟は生きることに耐え切れずに、死を選択しました。主人公は道徳観を塗り替えて、未来を選びました。

 

なんとなく、この曲を思い出しました。

www.youtube.com

 

 

そして、この曲も。

www.youtube.com

森山直太朗。すごい歌手ですね。

 

 

主人公はまた、母親の死別後にある言葉を引用しています。キリストが使徒に向けて与えた言葉です。

我なんじらを遣わすは、羊を狼のなかに入るるが如し。この故に蛇のごとく慧(さと)く、 鴿(はと)のごとく素直なれ

 

彼女がこれからの社会や人生に立ち向かっていくにあたり、指針となったのかもしれません。

個人的にとても刺さりました。心の片隅に置いておくと、良いことがあるかもしれません。

 

純文学、久しぶりに読むと良いですね。また何か読んだら感想文書きます。 

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